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掃除が終わり7人は春風のいる病院に向かった。
会話のない車内にはカーステレオから流行りの曲だけが虚しく流れる。
切ないバラード調のメロディーが心をざわめかせて、勇次は無言で音楽を止めた。
神様なんて誰も信じてやいないけど、その時だけは皆願った。
嘘だと言ってくれるなら誰でも良かった。
奇跡が起きるならなんでもすると言い切れる。
お願いだから、病院であなたが元気な姿を見せて。
嘘だって言って。
その願いは無残に打ち砕かれたけれど。
「…はる…か…。」
霊安室のベッドに横たわる春風に勇次がゆっくりと近づく。
顔にかかっている布を取り勇次は肩を震わせた。
紛れもなく春風だった。
高杉が春風の顔を撫で呟いた。
「…藍沢さん、お疲れ様。」
その顔には哀しげな、しかし優しい笑みが浮かんでいた。
ジョーカーからトランプという少年と何があったのかを聞いて高杉は胸が痛んだ。
「もう…苦しい事なんてないから…。」
君はもう充分苦しんだから。
死んだ後がどんな世界かは分からないけど。
その世界では君が幸せでありますように。
君を苦しませるものなど何もありませんように。
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