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「…あれから20年か。
時間が経つのは早いなぁ。」
「…本当に。」
君がいなくなった世界では季節が色を無くしてしまったんだ。
桜の薄紅色も
海の深緑色も
葉の焦茶色も
雪の白銀色も
朝の朱色も
昼の碧色も
夕の橙色も
星の金色も
全てモノクロに変わってしまったんだ。
全てが目の前をただ過ぎ去って行くだけなんだ。
君がいる事で成り立っていたバランスが崩れてしまった。
「…裏も最初は荒れたけど…今じゃICE REAPERがいた事さえ皆忘れてます。」
だから怖いんだ。
君の事を僕らも忘れてしまうんじゃないかって。
いつかはこの胸の痛みも忘れてしまうんじゃないかって。
「…俺、今でもあいつの事思い出す度に死にたい位苦しくなるんです。」
隆文はそこで言葉を切り俯いていた顔を上げた。
「…けど、あいつに出逢って好きにならなきゃ良かったとは思わないんすよね。」
こんなに苦しいけど。
癒える事のない痛みだけど。
あなたに出逢えて良かったと
そう思えるんだ。
「だから…俺、前に進もうと思うんです。」
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