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「ーっ…行か…せま…せん…!!」
春陽は脂汗を流しながらも立ち続けていた。
膝は震え、今にも崩れ落ちそうだが確かに立っている。
覚悟の大きさだけで立っている春陽に春風は少し驚いた顔を見せるがすぐに表情を戻す。
殺気を強くすれば春陽を倒すのは容易いが、これ以上強くすると彼女は死ぬだろう。
いや、死なずに済んだとしても恐怖に蝕まれ、いずれ闇に飲み込まれる。
…今の自分の感情のままに行動出来たらどれ程楽だろう。
躊躇う事無く彼女を殺し逃げる。
それだけで良いのに…。
だけど引っかかるのだ。
未来の自分ならどうするのか。
感情のない自分には答えを出す術がない。
同じ人間なのに未来の自分の行動が分からないのだ。
「馬鹿げてるよね、ほんと…。」
だからいらないのに。
邪魔な物を全て捨てて生きて行きたんじゃないの?
感情も後悔も希望も捨てたのに、何故また取り戻したりしたの?
そんな物、私には必要ないでしょう?
どうせこの体はもうすぐ壊れてしまうのに。
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