山乃 雪の日常

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「オマエ…クウ……オレ…カラダ…デキル…」 「人間襲っても大した力は得られないから俺を呼んだのか。こんなのに誘われるなんて胸糞悪ぃ」 「クウ…クイタイ……クウクイタイクワ…セロオォォォ!」 突如黒い影は獣が口を開けたように大きく広がった。 その中には様々な工具、凶器、廃棄物が無数に牙を向けた。 雪は前屈みになり大きく開いた口に向かって走り始める。 迫りくる障害物を体を捻りながら避ける。 しかし口は一瞬にして雪を取り込み閉じた。 「タベタ、タベタゾ!」 黒い物体は食物を咀嚼するように動く。 しかし一向に黒い物体に変化は見られない。次の瞬間 ガキンッという音と共に黒い魔は凍りづいた。 そしてガラスが割れるように内側から氷の塊は爆ぜる。 「ふんっ、その程度で俺が死ぬわけないだろ。さっさと成仏しやがれ」 飛び散る氷の中心には髪が白く裸足に白い甚平を着た雪が立っていた。 周囲の温度は冷め足元は凍りついている。 凍りついた黒い影はバラバラになった後紅い煙を上げて蒸発していった。 この場に残るのは雪が出した氷の欠片と折れた机の足、金槌、平均台と様々な物が落ちている。 「片付けるの面倒だな………、そのままでいいか」 雪はふぅ、と息を吐くと髪は元の黒、格好も学ランに戻った。 そしてそのまま下駄箱に置いた鞄を持ち帰路に着くのであった。 「何よあれ…。面白いもの見ちゃったかも♪」 この出来事を見ていた人がいることも知らず………。 .
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