誰かの記憶……

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「少年、しっかりしろ!」 辺りはもうすぐ日が照らし始める時刻になろうとしている中で黒一色の外套に包まれた中年の男性が焦りながら小さな男の子の頬を軽く叩いている。 「う………う~ん。あれ、ここは?」 男の子が目を覚まし男性は安心した表情を見せた。 「ここは君の家から少し離れた場所だよ。それよりおじさんの事は覚えてるかな?」 男の子に不安な気持ちにさせないために目線を同じにして話し掛けた。 「うん、ルーカスおじさんでしょ?たしかお母さんの親友のローズさんと一緒にいた人!」 男の子は元気よく答えた。ルーカスはあぁ、よく覚えてたねと頷いた後に質問した。 「おじさんは今日一緒にお酒を飲まないかと誘われてきたんだ」 と言うと 「あ!だからお父さんがお酒を持って来てって!……僕お酒運んでる途中で倒れちゃったんだ………」 男の子はしゅんと頭(こうべ)を垂らし今にも泣きそうな顔になってしまった。 ルーカスは慌てて男の子を落ち着かせる為に頭を撫でる。 「その歳でお家の手伝いなんて偉いじゃないか!うちのリリスなんてまだ一人でお風呂も入れないんだぞ」 ルーカスは誉めながら頭を撫でた甲斐があったか男の子は次第に明るい表情になった。 続けざまに彼はある提案をした。 「どうやら粉雪さんと英樹君はお仕事ができたらしい。急いで家を出て行ったからな。 だからおじさんの家に遊びに来ないか?リリスも逢いたがっていたぞ」 その時、男の子は両親がどんな仕事をするかより久しぶりに遊び相手ができたことに対して喜びの気持ちで溢れていた。 掴まってくれと言われた男の子は素直に頷きルーカスの広い背中に抱きついた。 彼も男の子を落とさないよいにしっかりと足を持ち背負った。 「わぁー、とっても高い!鳥さんになったみたい!」 男の子ははしゃぎながらも自分の家が何処にあるか探した。 そして何か建物だったらしき物を見つけただただそれを見るだけだった。 ―――――――― ――――― ――― ―…
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