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少し上にあったはずの顔はいつのまにか目の前で、息がかかる程近くに来てい た。幸村が喋るたび、唇の前の空気が小さく震えた。 「っ、」 呼吸が止まる。 こんな幸村、俺は知らない。頬が熱を持つのが感じられた。 「政宗殿、それは良い返事にとって良いのか?」 珍しく真面目だった表情は崩れ、嬉しそうにまた人懐こい笑顔に変わる。 「わ、おい!」 伸びてきた腕にぎゅっと絡め取られる。温かい、冬が長かったせいか余計にそう 感じた。 「一月我慢したかいがあった」 耳の横でポツリと呟かれたその一言は、とてもとても嬉しそうだった。 「あ゛?what?何だって?」 「う゛、あ、某、今声に……」 「出してたぜ?」 俺の身体に絡ませていた腕を慌てて解くと、目をそらした。己の米神がぴくりと 動くのがわかった。口角を上げて無理矢理笑みをつくるが、口元が引き攣る。 「その、」 「本当はもっと早く来れたってことか?」 「否、それは……」 「俺を余計に待たせたんだな?」 「ま、政宗殿……」 ゆっくり立ち上がると、幸村がじりじりと後ろにさがって行く。 「どういうことだ」 「その、実は……」
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