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冬の間はすることもないせいか、余計にそのことに思考を持っていかれた。 返事が欲しいと言われた。俺にとっての幸村は好敵手で、戦で合間みえるのをい つも楽しみにしていたのは事実。しかし、恋愛感情で好きかと問われると…正直、わからない。ここ数ヶ月、思考を占めたのは確かに幸村だったが、いつまで 経っても会いに来ない相手に怒りが生じる。そして、あれが冗談だったのではないかと怯える気持ちも心の中にはあった。 桜の花を見事に咲かす太い幹に背中を預け、どかりと座り込む。風は優しく吹いて、政宗の少し長い黒髪を揺らした。瞼を閉じてそれを感じ、「早く来い…」と知らず呟く。 「呼んだでござるか?」 突然後ろからかけられた声に、びくりと肩を揺らす。 「なっ……!」 いつもは五月蝿いくせに、その男は気配もなく現れた。座っている俺の顔を上か ら覗き込む幸村の、傾けられた頭から紅い鉢巻が揺れた。 「お久しぶりでござる」 驚いている俺を余所に、幸村はあの日と同じようににこりと笑った。 「政宗殿、お会いしたかった」 そっと伸ばされた手が顔にかかる髪の毛を退け、そのまま頬を撫でる。
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