モノクロ幽閉

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目が覚めてからの一つ目の駅に停車した。頭がボーッとする…。 プシュー ドアが開くと少人数降りて行った。後ろ姿しか見えなかったが、皆足取りが重そうだった。この人たちを見て、僕は“電車が遅延した”と考えた。これから出社だったり、用事があったり、色々あるのだろう。遅延したのなら予定がそりゃ狂うだろう。足取りも重くなるはずだ。そう考えた。 プシュー ドアが閉まると次の駅へと電車は走り出した。 ガタンゴトン 席がだいぶ空いた。さっき降りて行ったから、ってほど人がいた訳ではないけれど、電車の中は更にガラ空きになった。見渡すと、座っている人は数名居た。 僕は寝ぼけ眼で車内を少し観察し始めた。 向かいのOL風の女性は泥酔状態。下を向いていて少ししか見えないが、顔が真っ赤。長い髪が乱れてて、靴が脱げていて、ぐったりとしながら眠っている。 その隣のサラリーマン風の男性も同じく泥酔状態で眠っているよう。ちゃんと後ろの壁に寄りかかっていて、女性よりはまだマシな状態。きっと隣の女性と恋人同士なんだろう。男性は女性の肩に腕を回して、自分側に大事そうに寄り添わせている。 右隣の列の座席に座っている、少し薄汚れた深緑色の作業着の白髪頭の男性は、手がボロボロで色が黒ずんでいる。重労働なのだろうか。無防備にもポケットから財布が落ちている。更に千円札も少しはみ出ている。 近くにいる人は以上。 その他にも、言うほど特徴のない普通のお兄さんやお姉さん(少し失礼だが)、少しメタボリックなオジサンもいた。 普段と何ら変わらない風景。
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