モノクロ幽閉

8/14
前へ
/14ページ
次へ
おい、僕。 山手線だぞ?いつもの通学路じゃないか。“富士山”駅もあっただろう?なのに次の駅が思い出せないなんて僕はどうしたんだ? わからない自分に段々とイライラしてきた。 プシュー 駅に着いた時、少しメタボリックなオジサンが立ち上がった。それなりに年はとっていそうな雰囲気。今気づいたが、格好が自衛隊っぽい。迷彩柄の作業着というか。オジサンの隣にはいつの間にか小さい子が行儀よくちょこんと立っていた。きっと気付かなかったのは、オジサンの巨体で隠れていたからなのだろう。やはり外が眩しすぎて顔はよく見えないが、雰囲気で笑っているのが解った。二人は幸せそうに電車を降りて行った。 ―――バンバンッ ベチャッビチャッ 二人が降りてすぐ、外から銃声らしい音が二発分聞こえた。そう思ったと同時に、車窓に二人の血であろう液体がベタリと付着した。 付着したその血液は何かの形を生み出していて、花の形をしていた。勿忘草だ。花言葉は『私を忘れないで』。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加