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姉貴はそのままリビングへ帰っていく、その速さ風の如し。
俺は姉貴にビンタされた頬を撫でながらリビングに降りる。
リビングに降りると2人の人物が食卓を囲んでいた。
「おはよう翔ちゃん。」
俺ににこやかな笑みを送ってくるのが母の蒼夜 麻奈〈ソウヤ マナ〉、どこにでもいる普通の専業主婦だ。
「………」
トーストをかじりながら経済新聞を読む寡黙な男性が父の蒼夜 仙太郎〈ソウヤ センタロウ〉、官公庁で働いている真面目一筋な人柄だ。
「母さん姉貴は?」
「鈴花なら赤い顔をして出て行ったわよ、何があったのかしら…」
俺はその言葉を聞き「さっきのことか」と内心ほくそ笑んだ。
「翔…話がある」
父さんが珍しく俺に話しかけて来た。
いつもより30%増しで難しい顔をしている。
「どうしたんだよ父さん…?」
俺は父さんから発せられる異様な空気に怖じ気づきながらもイスに座る。
「学校は慣れたか?」
「いや…あんまりクラスメートの顔覚えてない…高校って中学とあんまり変わらないな。」
「そうか…」
父さんはそのまま新聞に目を戻しトーストをかじる。
「…………」
「…………」
「えっと…それだけ?」
「他に何がある?翔も早く朝食を食べて仕度しなさい。」
朝食を食べ終えた父さんはリビングを出ていった。
「それだけかよ…」
普通の家庭の親が普通に聞くことを父さんは真剣に喋るから困る。
でも今日の様子は違ったな…
俺は目の前にあるトーストと目玉焼きと野菜スープを野獣のように食べ尽くしていく。
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