第1章[動き出した時間]

4/6
前へ
/14ページ
次へ
「えぇ、分かってます。無理をするつもりはありません」 騒がしい塀の外に目を向けて微笑んだ明日羅は続けた。 「ただ…皆さんの為ですから、気を抜けないのも事実です。近々、協会の方で集会があるかもしれませんね」 「もう…やっぱり心配です」 小春は苦笑いを浮かべた。正に、いつもそう言って無理してるんですから…と言っている様だった。 城の時計塔が昼の鐘の音を告げた。 通りは先程よりも更に騒がしくなっていた。 「さて…こんなにいい天気なのに家に籠っているのも勿体ないですね…散歩がてら外に昼食でも食べに行きましょうか?」 「いいですね、たまには」 ニコリと笑って小春は頷いた。 「確か…もう一つ向こうの通りに…」 と、明日羅が言い掛けた時、玄関の戸が開く音がして、 「明日羅先生!!明日羅先生はご在宅ですか!?」 慌てた風なその大声は家の隅々まで響き渡った様だった。 「おや…?あの声は…」 少し怪訝な顔になって明日羅は玄関に向かった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加