幻想夏談

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そこで初めて彼は顔を綻ばせた。 「さて、次に行くぞ」 「もうか? ちょっと休憩していこうぜー」 「うるさい。第一お前は疲れないだろうが」 「あーそんなこと言うの? オマエって仕事熱心すぎんだろ。……実は尽くすタイプと見た!」 「黙れ」 彼は右耳のイヤリングを指で弾く。 ――ちりん。 いつの間にか雨は止んでいた。 雲の切れ間からは太陽が覗いている。 相変わらずくだらない会話が遠ざかって行くと、再びその庭に静寂が戻る。 陽光に照らされた庭の片隅。水を含んだ紫陽花が、その光を受けてきらりと光っていた。 END
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