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「わかんない……?」
どうやら、こいつは本当に何も知らないらしかった。
家から遠く離れたところに捨てられたようで、家に帰ることもできないらしい。
それなのに、不安がる様子もない。
とりあえず、人通りの多い場所に行く。
そうしたら、何か手がかりを見つけられるかもしれない。
行き先を駅前に決めると、隣を歩く孝二(俺の体)に話しかける。
「なあ。オマエさあ……おかーさんと離れ離れになって不安じゃないのか?」
「ん~全然」
何でだよ。俺がそう聞くと、孝二は笑ってこう言った。
「だって、いい子にしてたら、すぐに迎えに来てくれるっていってたもん」
「……」
これっぽっちも疑うことなくそう言った。
それに、俺は何かを言おうとして――やっぱりやめた。
こいつの信じていることに俺がとやかく言うことではない。
そう、
たとえそれが……
嘘だとしても。
「この飴とってもおいしいよっ」
「しょうか。よかったな」
「うん!」
どうせ俺たちは、たまたま出会っただけの赤の他人だ。
だから、この先こいつに何があろうが、どーだっていいんだ……
****
「ケイ……おしっこ」
すかさずトイレへダッシュ。
「ケイ、お腹すいた」
はじめてのおつかいinコンビニ。
「うふふっ。おっぱい」
「いやあああああ!」
「しゅいませんこの人頭おかしいんです」
駅前でもとどまることを知らない孝二の暴走っぷりに、涙があふれ出てきそうだった。
結局、探し回ること三時間。
もうこれは無理かもしれない。
そう思いつつ、傾き始めた太陽を見上げていたその時、
「ママ!」
「なに?」
ようやく、孝二の母親を見つけた。
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