チェンジ!

7/10
前へ
/80ページ
次へ
「わかんない……?」 どうやら、こいつは本当に何も知らないらしかった。 家から遠く離れたところに捨てられたようで、家に帰ることもできないらしい。 それなのに、不安がる様子もない。 とりあえず、人通りの多い場所に行く。 そうしたら、何か手がかりを見つけられるかもしれない。 行き先を駅前に決めると、隣を歩く孝二(俺の体)に話しかける。 「なあ。オマエさあ……おかーさんと離れ離れになって不安じゃないのか?」 「ん~全然」 何でだよ。俺がそう聞くと、孝二は笑ってこう言った。 「だって、いい子にしてたら、すぐに迎えに来てくれるっていってたもん」 「……」 これっぽっちも疑うことなくそう言った。 それに、俺は何かを言おうとして――やっぱりやめた。 こいつの信じていることに俺がとやかく言うことではない。 そう、 たとえそれが…… 嘘だとしても。 「この飴とってもおいしいよっ」 「しょうか。よかったな」 「うん!」 どうせ俺たちは、たまたま出会っただけの赤の他人だ。 だから、この先こいつに何があろうが、どーだっていいんだ…… **** 「ケイ……おしっこ」 すかさずトイレへダッシュ。 「ケイ、お腹すいた」 はじめてのおつかいinコンビニ。 「うふふっ。おっぱい」 「いやあああああ!」 「しゅいませんこの人頭おかしいんです」 駅前でもとどまることを知らない孝二の暴走っぷりに、涙があふれ出てきそうだった。 結局、探し回ること三時間。 もうこれは無理かもしれない。 そう思いつつ、傾き始めた太陽を見上げていたその時、 「ママ!」 「なに?」 ようやく、孝二の母親を見つけた。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加