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豪邸の中は豪華で、廊下に沢山のシャンデリアが吊されている。
廊下に轢いてあるレッドカーペットの上を少女が全速力で走る。
その後ろを母の茉が着いて来た。
『お嬢様、幻次郎様に会う前に、お召し変えを』
祖父の部屋の前の廊下に差し掛かった時、メイドに引き止められた。
「通してよ!!おじいちゃんに何があったの!?」
『しかし…』
『幸、着替えて来なさい。幻次郎おじいさんには私が着いてるから…』
荒い息遣いで茉は幸に声を張り上げた。
さっちゃんとは呼ばないのは、その場の漆黒な空気を物語っていた。
「………すぐ、着替えて来るから」
幸はメイドに渡された服を受け取り、自室で着替えた。
『お嬢様…!』
「通して!」
『きゃ…ッ』
幻次郎の部屋の前にいたメイド二人を押し退け、幸は部屋に入る。
中に入ると、畳みの良い香りが漂った。
豪邸自体は洋風に作られているが、幻次郎の部屋だけ、和室になっているのだ。
部屋には母と父、そして意識がない祖父の姿。
「おじいちゃん…!」
『幸…』
父と目が合う。
彼の目は潤い、今にも涙が零れそうだ。
『さ…ち……』
部屋に、幻次郎の弱々しい声が響いた。
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