1041人が本棚に入れています
本棚に追加
「さて、と……」
可愛い女の子という条件を出したんだ、カイトが盗み聞きする可能性は万に一つも無い。皆無と言っていいな。
だから、どんなにこっ恥ずかしいことも出来るわけだ。
いや、エロいことはしないからな?
ここ、重要だ。
俺は馬車の座席に座り直すと、ちらりちらりと辺りを伺いながらコユキにだけ聞こえる声量で呟いた。
「コユキが必要なんだ」
「ッ~~~!!?」
耳の後ろ側まで真っ赤に染めたコユキは更に俯く。
な、なんて恥ずかしいんだ……。こっちまで顔が熱くなってくる。
内側から込み上げてくる熱に、パタパタと手で仰いで冷ます。
もう、十分だよな?
俯くコユキに俺は良心を痛めながら愁いを帯びた瞳で、少し前の屋台での間接キス騒動を思い出していた。
『シンラ君、顔真っ赤だよ~?』
過去のヴィジョンがよぎる。
コユキに男の純情を良いようにからかわれたあの時。あの瞬間。あの雪辱。
まだ、ダメだよな?
心の中で頷いた俺は、街に着くまでの時間を言葉で攻めることにした。
最初のコメントを投稿しよう!