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ショートホームルームも終わり、お待ちかねの放課後が始まる。
僕は伝蔵とアニメイトに行く前に、いつもこんな儀式をするのだ。
「一万年と二千年前から愛してるうううううううう」
「八千年過ぎたころからもっと恋しくなったあああああああ」
「一億と二千年後も愛してるうううううう」
「君を知ったその日から」
「僕/俺は初音ミク/鏡音リンが大好きだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
教室の真ん中で叫ぶ馬鹿二人。
「うっさいわねぇ!」
すごい剣幕で怒鳴られた。
「おお、これはこれはかざりんじゃないか」
伝蔵とおなじくらい長い付き合い(幼馴染みたいなものか)の女の子、飾音音音(カザリネ ネオン)だ。
名前の字に「音」が3つも入っているのは…いつもからかいの対象である。
一家そろって音楽的な家系であることから、娘にも同じ道を歩んでほしいということで母がつけたらしい。
肩まである黒髪をツインテールに束ね、ちょっと釣り目な顔がかわいらしい。
「あんたらは恥じらいっつーものがないのか?」
音音が冷たい目で僕たちを見て言った。
「僕は全然」
「隠すことでもないだろ。愛しているものは仕方ない」
なぜか威張ったような顔で言う伝蔵。
「そうだ、かざりんもアニメイト行くか?」
音音の釣り目がさらに釣り上がる。あ、なんかいいなこの顔
「行かないわよ。あたしはあんたらみたいな趣味はないの。あとかざりん言うな」
「ちぇー。かざりんもこっちの文化に来たら楽しいのによぉ」
バキッ!
音音の拳が飛んだ。
「だ・か・ら!かざりん言うな!」
「クリティカルヒットー!」
床に突っ伏す伝蔵。ナム…
「馬鹿の相手ばっかりしてられないわ。あたしはそろそろ部活行くから」
「わかった。じゃあねー」
ばいばい黒理。と手を振る音音を見送ったあと、僕は伝蔵をついたり蹴ったりしてなんとか起こしたのであった。
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