想い(仮)

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 騙されたのだ。    俺の頭の中にはこの言葉がこだまする。    俺の名前は藤堂廉【トウドウレン】高校二年。    家は親父が友達と興した会社の役員。そのお陰で少しは裕福だ。    お袋は専業主婦だが親父をしっかり支えてる。明るく元気な人だ。    そんなお袋が可愛がっているのが、妹の知花。ちょっと離れているが小学生。    家族四人、幸せだったんだ。あの時まで。    一緒に会社を立ち上げた友人に騙された父は会社役員という地位と財産を取られた。    ある日突然。    そして、説明を求め友人の元に行った先で交通事故にあい死んだ。    あろうことか、その友人とやらは俺たちに。父が作った借金を返せと言ってきた。返せなければ、女である妹を差し出せとまで言ってきやがった。    親父たちが一生懸命作った貯金や守ってきた家を取られ、返せれる現金などない。だが、大切な大切な妹を差し出すなんて絶対にしたくない。    そんな事情の俺たちを匿ってくれる親戚なんぞいなく。公園から公園へ渡り歩く生活が続いた。    どうするもいい案が浮かばず途方に暮れていた。    俺は男だ。どんな苦痛も我慢しよう。だが、妹は。妹は女で、小学生だ。彼女だけは辛い目にはあわせたくない。         .
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