第二章

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『ヴァルキューリさん、いったい何の事を言ってるかわかんないよ。』   周囲の安全を確認したオレは、岩から出てヴルキューリに尋ねた。   『そうね…いきなり言われてもわからないのは当たり前だわ。 いい?原子は原子核とその周りを回る軌道電子とで構成されていて、さらに軌道電子は自転をしているの。その軌道電子の自転の事を゙スピン"というのよ。 磁気というのはスピンからなるもので、電子が時計回りにスピンするとスピンの垂直下向きがN極、上向きがS極になるの。 ちなみに軌道電子は対になっていて、それぞれが反対方向にスピンしているから、通常はN極とS極が打ち消し合って磁気がない状態になっているのよ。 ここからが私の゙術(すべ)"…私はその軌道電子のスピンの方向をコントロールする事が出来るの。 対となる軌道電子がそれぞれ同じ方向にスピンしていたら、磁気は打ち消し合う事がなくなり、その物体は磁石となる。』   オレはヴルキューリの説明が全く理解できず、黙り込んで何度も首をかしげた。 そんなオレを見たヴルキューリは、ため息をついて話しのレベルを落として答えた。   『まぁ、簡単に言うと…どの物体も磁石にしてしまえるという能力よ。』     …はじめからそう言ってくれ。   ヴルキューリの説明によると、あの巨人が倒れたのは巨人の両足の内側をそれぞれN極・S極にし、吸引力によって足を縺れさせて倒したらしい。 原理はどうであれ常識はずれの技、まさに魔法のようである。   『さて…用も済んだ事じゃし、さっさと帰るかのぉ。』   度肝を抜かれるような戦いの直後にもかかわらず、オーディンは何事もなかったかのように立ち上がり、馬車に乗り込んだ。 もしかして、こういう事は日常茶飯事なのだろうか?   死者ながらオレはこの先の人生に大きな不安を抱きながら馬車に乗り込んだ。
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