7人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
ヴァルキューリを助けないと…!
そう思っても足が震えて動く事ができないどころか声すら出せない。しかし巨人は確実にヴァルキューリに近づいている。
『所詮は女…技術があっても根本的な力はないな。』
見下すように話す巨人に対して、ヴァルキューリは苦痛に顔をよがませながら叫んだ。
『この低級族が!!偉大なる神に手を出してただで済むと思うな!!』
『ふん、生命の起源は巨人ユーミルだ。その巨人が低級族と言うのなら、それから生まれた神は何なのだ?』
とうとう巨人はヴァルキューリの目の前に立ち、その太い右腕でヴァルキューリの首を掴んで高く持ち上げた。
そして巨人は左拳を、ギリギリと音が聞こえるほど握りしめる。
このままではヴァルキューリが!オレは棒を強く握りしめた。
『ヴ、ヴァルキューリを離せ!!』
やっと声が出た。しかし膝が笑って立っていることで精一杯だ。巨人はそんなオレをみて軽く鼻で笑った。
『まぁ待て人間、コイツを殺したらお前もすぐに始末してやる。』
………
『……早く、逃げなさい。』
巨人の腕に力なくぶら下がってるヴァルキューリが、今にも消えそうな声でオレに言った。
どうしてコイツはこんな時に今日出会ったばっかりのオレの心配をしているんだ?今から死ぬかもしれないのに…
なのにオレは何だ?さっきから一人で怖じけづいて…今だって恐怖で膝を震わせているだけじゃないか。
巨人は大声で笑った。
『はっはっは!!ヴァルキューリよ、お前も使えないエインヘルヤルを連れているな。主人を守るどころか主人に守られているではないか!!
自分の無能さを悔やみながら死ぬんだな…』
(動け足!動いてヴァルキューリを助けるんだ!)
巨人は左腕を大きく振り上げた。
『くそぉ!動け!動け!!』
『……死ね』
『動けぇええ!!』
最初のコメントを投稿しよう!