7人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
『…!!』
ヴァルキューリは下げていた頭を勢いよく上げてオレを見た。
予想もしないオレの返答に驚きが隠せないのだろう。オレは続けて言った。
『戦う理由はある。この巨人族との戦いに勝利しないと、オレ達人間は絶滅しちゃうんだよね?なら戦う以外の選択肢はオレには無い。でも、すぐに返事が出来なかったのは…怖かったからなんだ。家族や友達が殺されるのは見たくない、でも、オレだって魂の死は怖い。
巨人と戦った時、グングニルと契約を結ぶ前のオレは恐怖で震えて声すら出せないでいたんだ。でも…』
オレはグングニルを強く握って、ヴィーダルの前にやった。
『コイツと契約を結んだ瞬間、そういっだ負"の感情が一気に消えていった。力がみなぎってきて、あの時は誰にも負ける気なんてしなかった。
グングニルとの契約でオレに迷う理由は無くなったんだ。
だから…オレは家族や友人達の為に巨人族と戦うよ。』
(それに…)
…パチパチパチ
後ろから拍手が聞こえた。オレはとっさに振り返ると、そこには知らない男が立っていた。ヴィーダルとヴァルキューリが剣を構えないから敵ではないようだ。いったい誰だろうか?
男はオレを見てニッコリと笑顔を見せて言った。
『すばらしいじゃないか!流石ば神槍 グングニル"に選ばれし者。エインヘルヤルにしておくには勿体ないくらいだ。』
そして男はオレの前に立ち、オレの手を引いてヴィーダルの3歩手前まで導いた。男のその突然の行動にオレは何もできずに、ただとまどった。
ヴィーダルは男に言った。
『ヴァラスキャルヴの見回りは異常ないようじゃな。ちょうど良い、この少年に戦う為の防具を与えてくれんか?』
『かしこまりました…』
そう言って男は手をのばすと、オレの身体から暖かい光が出てきた。その光は心地よく、全てを癒してくれるような気がする。しばらくの時間、オレはその光に包まれた。
……
『こ、これは?』
光が消えたオレの体には古代ローマ時代のような服が着せられていた。
最初のコメントを投稿しよう!