第三章

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  オレは今、一人でヴァルスキャルヴの門の前に立っている。   昨日正式にエインヘルヤルになり、早速今日から戦うための訓練を受けに行くようヴァルキューリに言われてヴァルスキャルヴまで来たのはいいのだが…   (これからどうしたらいいんだろう…)   オレは何をしていいのかわからず、ヴァルキューリから貰ったメモ紙を出してそれとにらめっこをしていた。     ………     『あら、こんにちは。今日はヴァルキューリから言われて来たの?』   いきなり声がしたので、ふと顔を上げると、目の前にフレイアが立っていた。そしてお互いの目が合うと、ニッコリと笑って首を少しかしげた。 そのあまりの美しさに、ついついオレもへらへらと顔を緩ませて笑ってしまう。   ……いかんいかん!!   オレは緩みきった顔を慌てて元に戻した。   『そうなんです。しかし…フレイアさん、まさか昨日に続き今日もあなたに会えるとは…僕は幸せ者です。』   『あのぉ~、この門の前が私の定位置なんだけど…まあそれはよしとして、ヴァルキューリから話しは聞いているわ。今日からエインヘルヤルとしての訓練を受けるんでしょ?案内するからとりあえず私の後についてきてね。』   ヴァルスキャルヴの中に入っていくフレイアの後ろを、鼻をいっぱいに伸ばしながらオレはついていった。           門をくぐって、ヴィーダルのいる部屋の方とは反対の方向にしばらく歩くと、400メートルトラック程の大きさの広場に着いた。他の場所は芝生が敷かれているのに対し、ここだけは土だったり、所々に岩が置いてあったりしている。 そして何人かの人(おそらく神だろう)がそれぞれにトレーニングをしたり、ペアで組み手をしたりしている。   …いかにもといった感じである。     オレがここの雰囲気に圧倒されていると、遠くの方からひときわ背が高く、いかつい男がこちらに歩いてきた。フレイアの知り合いだろうか?   そして男がオレ達の前で立ち止まると、フレイアは男に軽く頭を下げ、今度はオレの方を振り向いて笑顔で言った。   『紹介するわ。この人が今日からあなたの訓練係りの゙チュール"よ。』
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