一章 日常

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心地好い風が吹き抜ける。 雲一つ無い晴天の下、芝の上に寝そべる身体を風が優しく撫でていく。 「ん~~」 柔らかな日差しと、心地好い風をその身に受け、大地に寝そべったまま両手を広げ背中を伸ばし、 「・・・そろそろいくか」 質素な革のズボンに膝まである銀のブーツ、麻の服に銀の胸当てを身に纏った男、ランスは広げた両手の先に置いてあった長剣を握ると緩慢な動作で立ち上がった。 どれくらいそうしていたのかはわからないが、ランスの寝ていた場所の芝が折れたままになっているあたり、短い時間ではないだろう。 立ち上がり、長剣を腰に差した後も腰を二三度左右に振るう。 「よしっ!今日も良い天気だ」 毎日が晴天という訳でもないが、別段何が違うという訳でもない。 誰もが意識する事ない、無自覚のまま感じる幸せ。 刺激を求めながらも、変化を恐怖する人々の安らぎ。 いつもと同じ、何も変わらぬ一日の訪れ。 何も変わらぬ日々の連鎖。 今日も一日、普段通り、代わり映えの無い日常が始まる。
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