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いったい……何時からだろうか、こんなに闇が深く、そして心地好く感じたのは。
そうだ。僕は……闇から生まれたんだ。
そう、僕は月が最も輝く、そして闇の一番明るい日に生まれた。
それは、まるで赤ん坊が言葉を発するように……切なく、そして力強く。始めからそこにいたかのように、僕は生まれた。
黒い布を身に纏い、月明かりに照らされ、僕は目を覚ました。
そして、最初にしたこと、それは呼吸でもなければ、瞬(まばた)きでも、ましてや自分の姿を見ることでもない。
ただ……闇を感じることだった。闇を感じ、僕はとても好きになった。
それは僕を決して、裏切らないから。
そして僕を決して、傷付けないから。
だから、きっと僕は闇から生まれたんだ。何より心地好く、そしてそれは何よりも好きな闇だったから。
そして、何時しか僕は闇と対極にある光りを拒み、突き放していた。光は不思議なことに僕を拒否も、肯定もしなかった。
光を嫌う僕はいつも一人ぼっち。闇を受け入れ、光を拒んだ。ただそれだけ。
けれども、一人ぼっちでも別に寂しくはなかった。だって僕には、感情がないから。
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