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月が辺りをほの暗く照らし始め、夜の始まりを告げた頃。
少女と出会った。
少女は、僕を見ると。
〝クロ〟と呼んだ。
僕を見た少女は、僕を不思議なものでも見るかのような顔をしながら近付いてきた。
それは九割の好奇心と一割の不安と言った感じで、少女はとても物珍しく僕を見た。
ボロボロの黒い布を身に纏った僕を汚いとは、思わなかったのだろうか?
僕を怖がったり、恐れたりしないんだろうか?
しかし、少女は僕を〝拒絶〟しなかった。
そして、少女に逢ったのも僕が生まれた夜のように、月夜の綺麗な日だった。
残月の夜、日は刻々と刻まれていく。そんな、夜。
けれど、僕は生まれてすぐには、動かなかった。
いや、動く意味を知らなかったんだ。
僕はぼーっと闇を見ていた。初めて見た闇もまた僕には優しく見えたのだろう。
そして、僕は何のために生まれ、何をするのだろうか? とずっと思っていた。
何日も何日も、朝は来ることなく、けれども夜は訪れた。
日が変わるということを実感していたのだろうか?
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