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宮崎自動車道を下りると、都城市に入り国道10号線を走っていた。
すると突然、佳子が口を開いた。
『あっ!
卓ちゃん次、左折して』
『おぅ、左ね』
左折したはいいが、ここ一帯の都北町を、ぐるぐると回る事になってしまった。
佳子は市役所の管理課から貰っていた跡地の地図を、卓にも見せながらある筈の跡地の碑を探した。
ここ一帯が、あの東飛行場である事は間違い無いのだから…
気は焦るばかりだが、余りにも変わり過ぎた風景を前に、佳子はなかなか特定出来ないでいた。
辺りは工場や自動車学校、倉庫が建ち並び昔を思わせるものは、残念な事に何一つなかったのだ。
『この辺りが東飛行場だな…
う~ん。しかし見る影もないって感じだな、下館飛行場以上だ…』
『……』
車を走らせる中、一画だけ緑に覆われた小さな公園のような場所が佳子の目に飛び込んで来た。
『卓ちゃん止めて』
佳子の目に東飛行場跡地の碑がはっきり見えた。
『こんな所に…あったのね。
何度も通ったのに、見落としてたなんてごめんなさい』
佳子は車から飛び出ると駆け出した。
藤岡が出撃した飛行場跡地。
木々の中にある都北緑地広場には、確かに昔ここに飛行場があった事を示す碑がひっそりと佇み、綺麗な花が捧げ供えられていた。
卓はゆっくりと車から降りると、いつもと違う佳子の様子を不思議そうに見ていた。
『ここに、何がある?
ただの旧陸軍の飛行場だろ…』
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