一幕 再会

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  「かーごめ、かごめ」  蔦の絡む大きな屋敷。長く長く続く廊下には赤い絨毯が敷かれ、豪勢な装飾が施された窓にはシルクのカーテンが風に揺れる。  何処からか響いてくる歌はただただ単調で、虚無に満ちていた。 「かー、ごのなーかの、とーりーは」  時折音が途切れるのが、まるで壊れた蓄音機のようで不気味な雰囲気を屋敷の中に作り出す。 「いーつ、いーつ、でーやーる」  女性とも男性とも取れる中性的なその歌声は、さして大きい訳でも無いというのに鼓膜に絡み付いてくる。 「つーる、とかーめが、すーべった」  とある一室。愛らしい桃色を基調にしたその部屋のコーディネートは無理矢理にでも女の子らしさを作り出しているようで、不快感が残る。 「うしろのしょうめん、ダァレ?」  部屋の中央にある椅子に座る女性はゆっくりと口元を吊り上げた。カーテンの隙間から漏れる光が彼女の足元を照らす。  腰ほどまでに伸びた黒く艶やかな長髪が風に揺れて、光を掠めた。 「良かったね、自由ってわけかい?」  くぐもった笑い声と共に男の声が背後から届く。男を見上げた瞬間、彼女は柔らかく微笑んだ。男は黒いサングラスの向こうから彼女を見下している。 「おにいちゃんは、ダァレ?」 「良いように作られたのか。まるで愛玩人形だな」  男は表情を凍てつかせると、女性の髪を掴んだ。  
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