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「そうですね、その髪も少し整えますか。髪の色も合わせなきゃですね。服は確か替えがあったはずですし、そちらを……」
ぶつぶつと言葉を漏らす滝下の横で空樹は視線を泳がせながらも待機していた。怯えながらもその場から逃げることなく、ずっと立っている。
それはまるで等身大の人形のようだった。
「あ、えと……滝下さん、でいいんだよ……な?」
「滝下、と呼び捨てにしてしまって構いません。もし時史様のような話し方が慣れないようなら、敬語でもいいです。時史様も使い分けていますしね。どういう相手に敬語で話すかなどは僕が逐一指示しましょう。出来ますね?」
戸惑いを隠しきれない空樹を見ていた滝下が大きくため息を漏らして、提案する。空樹は安堵の表情を溢して頷いた。
「はい、お願いします」
「ただし女々しい話し方をするば分かりますよね?」
「……はい」
滝下の表情が凍りつくのを見た空樹は怯えながらも返事をする。
「着替えなどを持ってきますが、何処にクローゼットがあります?」
「あの角の部屋です」
長い廊下の先にある部屋を指差し、空樹が答えた。その場所を確認すると滝下は歩き出す。空樹が滝下の後を追おうと動き出すと、滝下が振り返った。
「アナタは、部屋で待っていてください」
「あ、はい。わかりました」
空樹の回答を聞いて、短いため息を漏らし滝下は去っていく。
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