一章

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一悶着終え、やっとのことで自宅に到着したのは夕方だった。 朝のうちにゴミの山を処分したので部屋は清潔綺麗なはずだった。はずだったのだが。 「なんでこんなにも飲み散らかした後が……」 「うわっ!酒くさっ!」 朝の惨劇を遥かに上回る惨劇を目の前にして思わず膝をつきうなだれてしまう。 今ならそこらに散らばっている缶だけでかなりのサイズのアートが完成してしまうのではないかと思ってしまった。 何故アートなのかはつっこまないでもらいたい。 「とりあえず反省は?」 「その前に助けてよー」 「何か出たー!?」 ひょっこりとゴミの山から人の頭が飛び出してきたのに御影が悲鳴を上げる。生首か何かだと思ったのだろう。 ゴミの中から頭がいきなり出てきて会話をしている。こんな光景、誰が見ても不気味に思わざるを得ない。何かもう空間がカオスだ。 「で、反省は?」 「飲み過ぎましたごめんなさい。お詫びにこの身体で頭のてっぺんから爪先まで御奉仕するので許してくださいご主人様」 「奉仕しなくていいからさっさと実家に」 「消えろー!!」 悲鳴とも取れる叫び声が聞こえたと思うと凄まじいスピードで顔の横を何かが飛んでいき生首へと直撃する。 クラッシュ音と共に缶が部屋を舞い、まだ開けていなかったであろう缶の中身がそこら中にキラキラと光りながら飛び散る。 部屋の掃除で徹夜することが確定した瞬間だった。
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