PROLOGUE

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
少年は、己を蝕む頭痛にその顔を歪めながら、ある一点を見据えていた。 その見据えた先には、一人の少女。彼女もまた、少年と同じ様に頭痛に苛まれていおり、苦悶の表情を浮かべている。 この二人が居るのは、窓や備品などは全くなく、床も壁も天井も真っ白な部屋。狭くはないが、決して広くはない部屋。そんな部屋の中央で向かい合う形で二人は佇んでいた。 「……こっちの準備は出来たけど、そっちは?」 少年の問い掛けに、少女は小さく頷き、その答えとした。 それを見た少年は、「そうか」と呟き、大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。そして右手を頭の上に掲げ、叫んだ。 「失われし背徳の力、空間歪曲!」 叫ぶと同時に、掲げていた右手を思い切り振り下ろし、手が空を切る。 すると、手で切った軌道上の空間に、切り傷の様な穴が開いていた。その穴の中は、複数の色をごちゃごちゃに合わせた様な、何とも言えない色が、うねうねと蠢いている空間が広がっている。 この事象を作った少年は、先程よりも激しい頭痛を覚え、喘ぎ声を漏らしながら思わず頭を押さえた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!