行き倒れとキャラバンの少女

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(まこと目線) 俺が目を覚ますと体はまばゆい光に包まれていた。 どことなく暖かく優しいその光は俺の心を落ち着かせる。 よくまわりを見るとそばに誰かが寄り添ってくれていた。 (あぁ、俺は本当に死んじまったんだな… ここは天国なのかな。じゃあ、この人は父さんかな…) 俺がそんな事を思っていると、その人は少しずつ俺から遠ざかっていき、一緒に光も消え失せていく。 そして、だんだんと俺の体からは熱が逃げていった。 離れて行く人が俺に向かって何か言ったような気がしたが、内容は全くわからない。 俺は心細くなってきて、その人に向かって叫んだ。 「嫌だ!! 待って行かないでよ! お願いだから一人にしないで!!」 気がつけば俺は叫びながら泣いていた。 生きていた時は家に一人でいようが全然寂しくなかったのに… 俺は初めて自分の弱さを知った気がした。 すると、冷たくなった右手が光に包まれたかと思うと、再び熱を取り戻していく。 そして、俺は再び眠りについた。
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