序章

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まだ冬の寒い季節。 この日は一年に一度、 恋人達が共にプレゼントを交換しお互いの愛を深めあう日。 「まなかぁーッ!!」 白く切ない小雪が降る中、 彼は息を引き取った。 胸に突き刺さる重圧な苦しさは大切な人を失った苦しみ。 それはナイフで突き刺されるより苦しく、 悲しく切ないものである。 その痛みに耐え立ち上がろとする彼女に真中を殺した張本人が口づけを交わした。 「裏切ったなッ! 信じていたのに・・」 汚物を払いのけるかのように唇を拭き、 彼女は言い放った。 「僕は君が好きなだけ。裏切ってはいない。ただ違うのは君は人間で僕は使者というだけのこと・・それが裏切りだと言いたいのかい?」 月夜に輝く薄紅色の瞳を持つ少年は、 髪をそっとかき上げた。 そして真中の胸に突き刺さるナイフを抜くと、 自分の胸にそれを突き立て ナイフを美代子に握らせる。 「僕が憎いかい? この哀しみ苦しみから解放されたいのなら、そのままナイフを押し込めばいい」 冬の寒さに凍てつくようなそのシーンは一度止まり、 次に再生された時には初雪に新たな紅色が染み付いていた。
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