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『最近太ったよね』。
それが友人Mに言われた一言であり、アタシに
『ダイエットしなきゃ!』
と決心させた一言である。
図星だった。
明らかにアタシは太ったのだ。
確かに妊娠、出産も経ている。
だがそれはMも同じだった。
彼女とアタシは同じ年にそれぞれ長男を授かっているのだ。
Mは体型もほぼ元通りになっていた。
それなのにアタシは…。
買ったボトムのウエストがきつい。
見て見ぬフリをしていた。
そこを、一番痛いところを、何の躊躇いもなくMはついたのだ。
ぐさっときた。
自分でも
「ちょっと太ったかな」
って思ってはいたから。
ずっと怖くて体重など測らずに来ていた。
Mに言われ、実際どれくらい太ったのか確かめてみたくなった。
恐る恐る体重計に乗ってみた。
すると…。
「えぇ―――――――――っ!?」
本当に信じられなかった。
出産直後の体重よりも増えているではないか!
しかも3㌔も!!
そんな馬鹿な!
アタシの見間違えじゃないのか?
目の錯覚とか。
でも違った。
体重計に嘘はなかった。
これが今のアタシの姿なのだ。
身長159㌢、体重62㌔の女…有り得なかった。
元からアタシは痩せてなどいなく、常に痩せたいと思って10代、20代を過ごしてきた。
理想の体重は45㌔。
だが現実は甘くなく、40㌔台にすらなれない。
ダイエットを試みるも、3日で挫折。
そのうち
「どうせアタシには無理だ」
「アタシはデブ」
という気持ちが抜けなくなっていったのだった。
コンプレックスの塊だった。
この体型を人に見られたくなくて、いつも体型を隠せる服ばかり選んで着ていたのだ。
Mはアタシとは対照的だった。
若い頃から細くてお洒落。
ミニスカートも抵抗なく穿き、水着は決まってビキニ。
明るく綺麗である程度自分に自信を持っていたので、アタシと違い堂々としていた。
Mが羨ましかった。
アタシは自分に自信を持てる部分など何一つ持っていなかったから。
そのMに言われた一言だ。
屈辱的だった。
彼女に悪気はなかったかもしれない。
だがアタシに
「何だとこの野郎」
と思わせるには充分だった。
ずっと痩せていて、10代、20代の頃にアタシが味わってきた虚しさや諦めの気持ちなど全く分からず、楽しい時間を過ごしてきた人に言われたくない!
こうなったら…もぅ、絶対痩せてやる!
是が非でも痩せて、こいつの鼻を明かしてやる!!
今までずっと三日坊主の根性なしのアタシだったけど…今度こそ、絶対に痩せてやる!
やるからには目標も高くしよう。
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