オッサンは辛いぜ

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  「違うよ」   何が?、と言う聡美に俺は、自分の考えを話して聞かせた。   聡美は黙って俺の話を聞いていた。      「な? 俺はいつどうなるか判らんオッサンなんだぞ。 子供を抱えてお前が大変な思いをするんだぞ。判るだろ?」     黙って聞いていた聡美が口を開く。     「判らん。 つーか、真ちゃんは120歳まで生きるから大丈夫だよ」   「120……。その根拠は?」   「なんとなく」     聡美は続ける。     「もしも、もしもそうなってもアタシは再婚なんかしないもん。 真ちゃんの子供を育てあげたら…… アタシも真ちゃんの傍に行くもん。 だから……。 それまでの間、困らないように、たくさん貯金する。真ちゃんにもいい保険に入り直してもらうもん……。 それに、真ちゃんは死なないから……」   そう言って涙ぐむ聡美を抱き寄せた。     「そうだな……。先の心配しても意味ないな」   「うん。だから、もう1回しよう?」   「は? これから?」     俺の言葉に頷く聡美。     オッサンに2回目って……。     無理だから。    
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