男ってやつは……

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  「聡美ちゃんは、その、知ってた? 藍子の付き合ってた人の事……」     その言葉に俺と聡美は顔を見合わせた。     「桜庭さんと付き合う前の人の事でしょ?」   そう聡美が聞くと桜庭は静かに頷いた。     「知ってたんだね……。当たり前か、藍子と友達なんだから。工藤さんも知ってたとか?」   その質問に俺も知っていたと答えた。   とは言っても、全て知ってる訳ではない。   不倫相手と自分から別れた彼女に、誰かいないかと聡美に言われ、そういう相手と付き合っていたのを知っていたというだけだ。   彼女の相手がどこのどいつで、なんの仕事をしてるかなんて事は全く知らない。    聡美は言わなかったし、俺も聞かなかった。      「なんで桜庭さん知ってんの?」   そう聞いた聡美に、本人から聞いたと桜庭は答えた。     「ふーん。藍子言ったんだ。で、どうしちゃったの? 桜庭さん」   「どうしちゃったも、こうしちゃったも……。 ショックだよ。 私、不倫してたのって聞かされたらさ」   「で?」』   「で?って」   「藍子の事嫌いになっちゃったの?」   「……、判らない」     桜庭は俯いた。  
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