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「過去をとやかく言うなんて。誰にだって過去はあるでしょ?
桜庭さん最低っ!」
「聡美、言い過ぎだ」
俺の制止も聞かず聡美は続けた。
「アタシなんて、不倫はした事無いけど、真ちゃんと知り合う前なんか、100人の男と付き合ったからねっ!」
(はぁ? なんだって?)
「聡美! お前、100人って、100人……。
俺は101人目?」
ああ、目の前が暗くなる。
藍子ちゃんの一度の不倫の方が、まだマシな気がする。
コイツ、何か月単位で男と付き合ってきてたんだ?
「真ちゃん?」
「工藤さん!」
遠くで俺を呼ぶ声がする。
俺はあの世に向かってるのか?
そうか、聡美の告白を聞いて俺はショック死したのか。
44歳の心臓は思ったより丈夫じゃなかったって事だ。
(痛っ!)
頬の痛みで俺は三途の川から引き返してきた。
いや、ただ気を失っていたらしい。
「真ちゃん……、気がついた? 判る?」
「工藤さん、大丈夫ですか?」
俺を見つめるふたりの顔が見えた。
「真ちゃ……ん。ビックリさせないでよぉ」
聡美が俺に抱きつき泣き出した。
聡美の背中を軽く叩いてやりながら、俺は溜め息をついた。
俺の方がビックリだ!
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