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「真ちゃん?」
考え込んでいる俺に聡美が声を掛けてきたが、俺は返事をしなかった。
「どうしたの? 真ちゃん……」
不安げな表情の聡美。
25人の男達の中に、こんなオッサンなんていなかっただろう。
みんな聡美と同年代くらいで、はち切れんばかりの若さを持った奴らばかりだろう?
実際に見た事もない過去の男達に、俺は嫉妬していた。
そんな嫉妬は馬鹿げていると判ってはいる。
桜庭の時には当然人事と受け止めて聞いていたのだろう。これが自分の事になると理性が利かない。
(なんで俺の前で言ったんだ)
自分から聞いたくせに、言って欲しくなかったと、矛盾した思いが俺の中に湧き起こる。
「出掛けてくる」
そう言って立ち上がると聡美もついて来ようとした。
それを制止して、鍵とタバコと財布を持つと家を出た。
頭を冷やそうと思った。
「真ちゃ……ん」
聡美に背を向けたまま俺は玄関のドアを閉めた。
(大人げ無い)
頭では判っているのに、心がついて来ない。
マンションを出た俺は、あても無く歩き出した。
薄曇りの空のお陰で、暑さは和らいでいた。
時折ふたりで散歩をすると寄る公園が見えてきて、俺の足は自然とその公園のベンチへと向かった。
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