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「藍子ちゃんだって苦しかったと思うよ」
まぁ、昨日聡美から聞いたんだけどさ、と前置きして俺は続けた。
ただ幸せになりたかっただけの彼女の相手は既婚者だっただけの事。
このまま続ける事に辛くなった彼女が選択した彼との別れ。
桜庭と付き合い出して不倫をしていた過去を教えずに付き合う事に、アンフェアを感じていた事。
桜庭を好きになればなる程、それが彼女を苦しめていたんだろう。
「どうしても黙っていられなかったと藍子が言ったんです。
俺が藍子の過去を許せないならこのままさよならしてもいいって……」
「許すとか、許さないとか……、なんだ? お前はそんなに偉い奴なのか?」
いやいや、と手を顔の前で振る桜庭に俺は言った。
「だよな、俺達は神様でも偉い奴でもないさ。
確かに不倫はいいモノではないと思うよ。
いけない事だと判っていてもどうにもならない事だってあるんじゃないのか?
人の感情がそこに絡んでいくんだからさ、複雑だぜ?」
まぁ、答はお前が出すしかないんだけどな、と肩を叩くと、桜庭はゆっくりと頷いた。
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