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桜庭達が帰ったあと、ふたりでキッチンに立ち洗い物をしながら、俺は聡美に聞いた。
「聡美、ウエディングドレスだけでも着て写真撮ろうか?」
「ん? 面倒臭いからいい」
(面倒臭いって……)
俺達が結婚する時に、籍を入れるだけでいいと言う聡美に、俺もそれでいいと思っていた。
俺は一度結婚式というものを経験しているが、ひな壇に座り、まるで見世物のような扱いを受けているようで嫌だった。
披露宴をやるのは俺は嫌だが、聡美にとって一生に一度の事なのだから写真だけでも……。
新婚旅行も行ってないし、住むとこだって俺のマンションに聡美の荷物を入れただけで、新居でもなんでも無い。
聡美のウエディングドレスを着た姿を想像してみると、年甲斐もなくドキドキした。
「何? 真ちゃん」
そう聞いてきた聡美に、いや、と返事をして俺はキッチンを出た。
聡美にドレスを着せたい。
俺の隣で真っ白なドレスを着て笑顔を向ける聡美が見たい。
果たして説得して聡美がうんと言うかどうかが問題だ。
だが、なんとしてでも聡美にドレスを着せようと思った。
綺麗な聡美が見たい。
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