俺の心嫁知らず

5/9
前へ
/89ページ
次へ
  仕事が終わり、会社に戻ると桜庭がいた。   デスクで商談書を作っているとこだった。   このあと彼女と会う事になった事を伝えた。   黙って会う訳にはいかないと思って話すと、桜庭は彼女から聞いていたようで、この計画が成功するようにと言ってくれた。           待ち合わせの喫茶店に入ると既に彼女は入り口から見える席に座り、俺に気付くと手を上げて合図をした。     『すまん、待たせちゃったな』   『いいえ、私も今来たとこだから。 あ、そうだ。なんか言いそびれちゃったけど、工藤さん、あの時はありがとう。 彼に話をしてくれて』     そう言った彼女に、たいしたことは言ってないと俺は答えた。     『で、聡美にドレス着せたいんですって?』   そう聞かれ、面倒臭いと答えた聡美の話を聞かせると彼女は大笑いした。     『工藤さんと結婚する事になった時に、私と陽子も言ったのよ。 その時も聡美ったら面倒臭いって言ったの。 あの子一度言ったら頑固なとこあるから』   『そうなんだよな……』   俺は頭を掻きながら言った。   そんな俺を見て、彼女が言った。     『工藤さん、大丈夫よ。私にまかせて、聡美を説得するから。 私と彼の復活に一役買ってくれたんだもの、今度は私が……、ねっ』   彼女はニッコリ笑ってそう言ってくれた。  
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2582人が本棚に入れています
本棚に追加