俺の心嫁知らず

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  「ただいま」   いつもと何も変わらない様子を見せ、俺は玄関に入った。   「あ、真ちゃん、お帰りなさい」   聡美がリビングから飛び出してきた。     「さっきさ、藍子から電話きて……」   そう言いながら聡美はキッチンへと向かって歩く。     (え? もう聡美の説得が始まってんのか?)     「今度の土曜日に陽子のとこに遊びに行く事になったんだ。 ほら、陽子の結婚式の写真が出来上がったから見に行こうってさ」     なるほど。   彼女のウエディングドレスを着た写真を見せながらの説得という事か。     「真ちゃん、どうしたの?」   「え、い、いや、楽しんできたらいい」     陽子ちゃんは一度会った事がある。   彼女は顔立ちが整っていて綺麗な子だった。   さぞかし花嫁姿も綺麗だっただろう。   そんな彼女の写真を見せられて説得されたら、いくら面倒臭がりの聡美だって、一度くらい着てみたくなるはずだ。   他の誰でもなく、俺のために着て欲しい。     「真ちゃん、気持ち悪~い。ひとりで何ニヤニヤしてんの」     聡美の声で我にかえる。     仕方ないだろうが、想像しただけで顔が緩んでしまうんだ。  
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