2582人が本棚に入れています
本棚に追加
「たっだいまぁ~」
元気な声がした次には、俺に纏わり付き、陽子ちゃん宅での事を楽しそうに報告する聡美。
まるで幼稚園児が、今日あった事を母親に話す姿そのものだった。
ただ、それを相手にしてるのは母親ではなく、悲しみのオーラを背負ったオッサンだが……。
「写真見せてもらったんだけどさ、陽子がすっごーく綺麗だったの。
あの子って和装も洋装もどっちも似合う顔立ちしてるんだよね」
「ふーん」
「でね、披露宴の時はさ白と黄色のドレスだったんだけど、前撮りの時には赤いドレスも着てんのっ!」
興奮して、まくし立てるように喋りまくる聡美を俺は見ていた。
「ん? どうしたの、真ゃん。あ、判った! お腹空いたんでしょ」
「…………」
俺の悲しみのオーラは、聡美の目には空腹からくるものに見えているようだ。
エプロンをしてキッチンに向かう聡美に声を掛けた。
「なぁ、お前はドレス着たいって思わないのか?」
「ん~」
聡美が少し考える様子を見せる。
(もしかしたら?)
「無い!」
俺はソファに倒れ込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!