休日のサプライズ

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  俺の淡い夢は、海の藻屑となって消えてから1か月が経っていた。   相変わらず、トイレから出て来た聡美が、俺に向かって言ってくる言葉を黙って聞いていた。     「どうしてなんだろ……。なんで出来ないんだろ」   新聞を読む俺を反対側から覗き込み、独り言とも取れそうな台詞を聡美は吐くが、明らかに俺に問い掛けているのは判っていた。     「欲しい、欲しいと思ってる時はなかなか出来ないもんだよ。 まぁ、いいか、くらいに思っていたら出来ちゃたって、会社の奴でそう言ってたのがいたぜ」   「まぁ、いいかって……。良くないもん。いいかじゃないもん」   「だぁから、そんなに気負うなって事だろ」   「だって……」   そう言ったあと聡美は黙ってキッチンに行ってしまった。   これ以上言うと俺を怒らせると感じたんだろう。     俺はしつこいのは嫌いだ。同じ事をいつまでもグズグズ言うのが、自分が嫌だから言わないし、相手にも言って欲しくない。   それを聡美も判っているからだろう。   この話を終わらせるために聡美はキッチンへ行ったと思われる。  
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