2582人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
赤い絨毯の敷かれた階段を静かに降りてくる聡美は、真っ白なウエディングドレスを着ていた。
この建物に入った時に、そうじゃないかと判っていた。
だが、今目の前に現れた聡美を見て、夢を見ているような気がした。
休日の今日、ソファで転がって本を読んでいた俺は、そのままうたた寝をしてしまったんだ。
「真ちゃん?」
いや違う。これは夢じゃない。
「真ちゃん、驚いた?」
「あ、ああ」
「やった!」
悪戯っぽく笑い、聡美が続けた。
俺に相談された藍子ちゃんから説得された時に、今回のサプライズを思い付いた事。
藍子ちゃんの友達が働くこのブライダルサロンに予約を入れた事。
彼女とふたりで極秘にこの計画を進めていた事。
「真ちゃんがどうしても見たいって言うんだからさ、見せてあげなきゃ死んでも成仏出来ないでしょ?」
口は悪いが聡美のこの言葉は嬉しかった。
1か月前、聡美と彼女にまんまと俺は騙されていたんだ。
このふたりときたら、主演女優賞並みの演技だったと思うと笑いが込み上げてきた。
これでいつあの世に逝っても俺は成仏出来そうだ。
いや、まだ逝く気はないがな。
実に嬉しく、俺の忘れられないサプライズだ。
最初のコメントを投稿しよう!