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「陽子だってさ、子作り宣言してるからね。負けられないよ」
コーヒーを啜りながら聡美が言った。
「こんなのを勝負してどうすんだ」
「だって、子作り宣言したのアタシが先だもん。それなのに先月結婚した陽子に先越されちゃったらさ……」
女という生き物はなんでこうも人と勝負したがるんだか。
「真ちゃんだって、アイツにだけは負けたくないって言うじゃん」
「バカ、俺の場合は仕事だ。それに人は人、俺達は俺達だろ?
俺はまだ暫くは聡美とふたりで楽しみたいけどな」
「え……」
聡美の顔がみるみるうちに赤くなり、次の瞬間俺の肩をバシバシと叩き言った。
「真ちゃんのエッチ!」
(コイツは何を想像してるんだ?)
「でもね、真ちゃん自分の歳考えなさいよ。
早く子供作らなきゃ爺さんになっちゃう」
俺は別に子供がいなきゃいない生活でもいいんだ。
聡美と一緒に同じ時間を過ごし、互いに歳を取って、いつか近所の公園で見たあの老夫婦のようになれたらいい。
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