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「ただいま」
「おっかえり~」
いつもの事だが、元気のいい聡美の声が俺を迎えてくれる。
リビングに入ると俺の足はそこで止まった。
「なんだあれは!」
「ん? これ?」
聡美が指をさしたモノ。
それは俺と聡美の写真。
先月ウエディングサロンで撮った写真が大きく引き伸ばされ、四つ切りサイズで壁に飾られていた。
少々派手なフレームに入れられていて《馬子にも衣装》の言葉がピッタリの俺が、そこで笑っている。
鳥肌が立つ。
常に見える場所にこの写真があるっていうのはどうよ?
「これでいつでも真ちゃんは綺麗なアタシを見る事が出来ていいじゃん」
聡美はそう言うが、その聡美を見るともれなく俺も見えてしまうから困る。
今日、出来上がった写真を取りに行き、ついでに実家に寄って一枚置いてきたと言う。
着替えてリビングに戻ると、またもや俺の視界に写真が映り、鳥肌が立つ。
(なんだ、あのニヤけた顔は……)
自分で自分が気持ち悪い。
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