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「そうそう、今日さ、陽子が遊びに来たの」
食事をしながら聡美が話し出す。
午前中に写真を取りに行って、それを教えたところ彼女がやってきたと言う。
「でね、真ちゃん。
アタシ達、陽子に負けちゃったよ」
「何が?」
「陽子ね、赤ちゃん出来たんだって」
「良かったじゃないか」
そう言うと聡美は頷き、そして急に無口になった。
妊娠に勝ちも負けもないのに、女というのは厄介な生き物だ。
「俺達は俺達だろ?」
「うん……」
何を話せばいいか判らず、暫く黙っていた俺だが、思い切って声を掛けてみた。
「聡美……。あの写真、隣の部屋に飾ったらどうだ?」
「いや!」
(いやって……)
あのニヤけたオッサンの写真がリビングにあるってどうよ。
来客があれば、リビングに通され、あの写真を見る事になるじゃないか。
聡美は若くて綺麗だからいいが、あのオッサンはどうだ?
「ダメったらダメだもんね~。真ちゃんとの永遠の愛を誓った写真なんだから、真ちゃんも毎朝この写真に永遠の愛を誓うんだよ」
「バカか……」
俺達は互いの顔を見て笑い合った。
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