妊娠

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  仕事帰りに聡美の好きなケーキを買って家路に着いた。   好きなモノを食わせて、意識を違う方向に持って行こう作戦だ。     いや、子供を欲しがる聡美に、妊娠させられない後ろめたさの表れかもしれない。       「ただいま」   「おかえり、真ちゃん」     いつもと変わらず聡美が迎えてくれた。   手に提げていたケーキの箱を聡美の目の前に差し出すと、嬉しそうな顔をした。     「真ちゃん、どうしたの? ケーキ買ってくるなんて珍しい~」   聡美はそう言って箱の中を見ている。     食べたくなったからだ、と言って寝室に着替えに行くと、聡美が後ろをついてきた。     来るのか?《どうして攻撃》が。   ケーキじゃ攻撃をかわせないか……。      「真ちゃん、藍子たち……」   「ああ、近いうちに籍を入れるらしいな」    ネクタイを外しながら俺は言った。     「良かったよね藍子。幸せをふたつGETしたもん」     (やっぱり知ってたか)     「真ちゃん、原因はアタシにあるのかな……」   「大丈夫だ。聡美は若いんだから」   「じゃ、真ちゃんに?  どうして陽子にも藍子にも子供が出来たのに、アタシには出来ないの?」    やっぱり始まった。  
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