2582人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
仕事帰りに聡美の好きなケーキを買って家路に着いた。
好きなモノを食わせて、意識を違う方向に持って行こう作戦だ。
いや、子供を欲しがる聡美に、妊娠させられない後ろめたさの表れかもしれない。
「ただいま」
「おかえり、真ちゃん」
いつもと変わらず聡美が迎えてくれた。
手に提げていたケーキの箱を聡美の目の前に差し出すと、嬉しそうな顔をした。
「真ちゃん、どうしたの? ケーキ買ってくるなんて珍しい~」
聡美はそう言って箱の中を見ている。
食べたくなったからだ、と言って寝室に着替えに行くと、聡美が後ろをついてきた。
来るのか?《どうして攻撃》が。
ケーキじゃ攻撃をかわせないか……。
「真ちゃん、藍子たち……」
「ああ、近いうちに籍を入れるらしいな」
ネクタイを外しながら俺は言った。
「良かったよね藍子。幸せをふたつGETしたもん」
(やっぱり知ってたか)
「真ちゃん、原因はアタシにあるのかな……」
「大丈夫だ。聡美は若いんだから」
「じゃ、真ちゃんに?
どうして陽子にも藍子にも子供が出来たのに、アタシには出来ないの?」
やっぱり始まった。
最初のコメントを投稿しよう!