妊娠

8/11

2582人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
  玄関に突っ立ったまま聡美が泣く。      「悪かった。言い過ぎた……」      俺だって子供を欲しがる聡美に生んでもらいたい。    でも実際には聡美が妊娠しないんだから、男としての能力が衰えてるのかと不安にもなる。      それを責められてる気がした。      違う。責めているのは聡美じゃない、俺自身じゃないのか?          「真ちゃん……、離婚しよう……」   「なっ!」     (なんでそうなるんだ!)     「原因は真ちゃんじゃないと思う。 きっとアタシに原因あるんだよ。 子供を生めないアタシは、真ちゃんを幸せに出来ない」     目にいっぱいの涙をためて、聡美は俺を見ていた。      「俺の幸せって何よ?」     俺は聡美に背を向けるとリビングに戻って行き、ソファに腰を下ろした。     俺の幸せはお前といる事だ……。     子供がいないと成立しないというもんじゃない。     違うのか?    
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2582人が本棚に入れています
本棚に追加