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聡美の身体を起こして座らせてから俺は話した。
子供がいる、いないで幸せが決まる訳ではないと思うと前置きしたあと、その先を続けた。
子供が欲しいから聡美と結婚した訳じゃないし、いなけりゃいないで二人で生きていけばいい。
いつか見た老夫婦のように、あのベンチで夕日を見たい。
「その時、俺は言うのさ。幸せだなってな」
「うん……」
「だから、病院に行って原因なんか見つけなくたっていい。
自然にまかせとけばいいんだ。出来なきゃ出来ないでいいだろ。
もしかしたら5年後、いや、10年後生まれてるかもしれないぜ?」
「その時、真ちゃん爺さんになってる……」
「老体に鞭打って頑張るさ。下手したら子供の世話しながら、俺の介護しなくちゃならなくなってるかもな」
「介護してあげる」
聡美はそう言って俺の首に手を回してきた。
俺はその身体を抱き寄せ、背中を軽く叩く。
ぐぅ~~。
聡美の腹の虫が悲鳴を上げた。
「えへっ。お腹すいちゃったね」
「よし、飯食おう」
俺達は大丈夫だ。
もし聡美が不安になれば全部俺が受け止めてやる。
ところで、ホントに介護してくれるのか?
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