夕日とベンチ

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  「陽子、こんなとこにいたのか、探しただろ」   そう言って現れたのは、彼女のご主人で、俺達に気付くと笑顔で挨拶をした。   トイレに行って出てくると彼女の姿がなく、もう少しで館内放送を頼むとこだったと笑っていた。     「ほら、荷物よこせ」   「軽いから大丈夫よ」   「だめだめ、妊婦は荷物を持たない!」   そんなふたりのやり取りを見て聡美が笑う。     「陽子、超大事にされてるじゃん」   「妊娠なんて病気でもなんでもないのに、心配性で困っちゃう」     使える者は使っちゃえ、と聡美は彼女に言って笑っていた。     「そろそろ行くぞ」   話の腰を折ったのは俺。     なんだか、この空気に耐えられなくなったからだ。   笑って話す聡美を見ていて、そんな聡美の前で彼女達が無神経に子供の話をするのを俺は耐えられなかった。     もちろん彼女達に悪気があるわけじゃないのは判っているし、聡美があの時に病院に行くまでの決心をした事だって、知ってはいないんだから仕方ないのも判る。   しかし、我慢が出来なかった。      彼女達と別れ、俺達は歩き出した。  
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